なぜARMデバイスでAdGuardに注目すべきか
Surface Pro XやThinkPad X13s、その他のWindows on ARMデバイスを使っていると、多くのアプリがインストールできなかったり、互換層でかろうじて動作し、動作が重くバッテリーを消費するという悩みに直面したことがあるでしょう。広告ブロックツールも例外ではありません。AdGuard v7.11はその状況を一変させました。64ビットARMプロセッサにネイティブ対応し、x86トランスレーションに依存しなくなりました。軽い作業と長時間バッテリーを重視するユーザーにとって、静かながらも重要なアップグレードです。
ARM対応の経緯
ARMアーキテクチャは従来のx86とは根本的に異なります。低消費電力で高速応答を追求しており、スマートフォン、タブレット、ルーターなどに広く採用されています。しかしWindowsエコシステムは長らくx86に依存しており、ソフトウェアベンダーのARM対応は遅れ気味でした。AdGuardは2022年8月のv7.11 beta 1でARMドライバのテストを開始、9月のbeta 2で改良を重ね、10月の正式版リリースと、非常にタイトなスケジュールで対応を完了しました。2024~2025年のv7.17やv7.20 betaでは、ARM版の安定性がx86版と同等に達しています。
注目すべき点として、AdGuardはプロセッサの種類を自動検出します。ARMデバイスにインストールすると自動で対応するドライバが選択されるため、手動でバージョンを選ぶ必要はありません。インストール手順は通常のWindowsソフトウェアと全く変わらず、初心者にも優しい設計です。
「動く」だけじゃない、「より良く動く」
ARMネイティブ対応によって、以下の実質的なメリットが得られます。
- 消費電力の大幅低下:x86エミュレーション層を経由しないため、CPU負荷が下がり、ノートPCのバッテリー持続時間が目に見えて改善します。常時AdGuardをバックグラウンドで動作させるユーザーには特に重要です。
- 応答速度の向上:ネイティブドライバによるフィルタリングの遅延が減少し、Webページ読み込み時のDNSフィルタリングやルールマッチングが高速化します。
- 安定性の飛躍:v7.15.1ではFirefoxのHSTS/SSL証明書エラーを修正、v7.17ではEncrypted ClientHelloの実験機能を改良。ARM版もこれらの修正を同時に享受できます。
また、M1/M2/M3チップ搭載MacでParallels Desktopなどの仮想マシンを使ってWindowsを動かしている場合も、AdGuardのARMドライバが有効になります。Macユーザーが一時的にWindows環境で作業する際、広告のない快適な体験を維持できる嬉しい副産物です。
暗号化DNSフィルタリング:ARMユーザーへのさらなる恩恵
AdGuard v7.11では同時に、暗号化DNS-over-HTTPS(DoH)リクエストのフィルタリングという重要な機能も追加されました。以前はAdGuardは暗号化されていないDNSリクエストしか処理できず、ブラウザが独自にDoHを設定している場合、AdGuardはブラウザ内でフィルタリングした後、非暗号化リクエストに変換して送信する必要があり、安全性が損なわれていました。現在は詳細設定で「セキュアDNSリクエストのフィルタリングを有効にする」をオンにするだけで、暗号化トラフィックをそのままフィルタリングできます。
v7.17ではさらに、オンザフライDoH接続フィルタリングが実現しました。ブラウザからのDNSリクエストはシステムDNSを経由せず、AdGuard内部で直接暗号化フィルタリングされます。プライバシー重視のユーザーにとって、このアップグレードの価値はARM対応に劣りません。
HTTP/3フィルタリングとCoreLibsの進化
AdGuardのフィルタリングエンジンCoreLibsは近年着実に進化しています。v7.15ではHTTP/3(HTTP-over-QUIC)フィルタリング機能が導入されました。QUICプロトコルはTCPよりも高速なハンドシェイクと優れた多重化能力を持ち、ネットワーク環境が悪い場合でも体感速度が向上します。AdGuardがQUICベースの広告リクエストを識別・フィルタリングできるようになったことで、ブロック率が高まり、抜け漏れが減少します。
筆者がSurface Pro Xにv7.17をインストールして簡単なテストを行ったところ、YouTube、Bilibili、ニュースポータルなど主要サイトでの広告ブロック効果はx86版と差がなく、ページ読み込み速度はQUIC最適化によりむしろ若干速くなりました。CoreLibsがv1.14.53にアップグレードされたことで、Encrypted ClientHello(ECH)の実験的サポートも進んでいます。ECHはTLSハンドシェイクの最後の平文部分を暗号化するもので、この機能がデフォルトで有効になれば、プライバシー保護の最後の一歩が完成します。

